10年間の「ごめんね」を、暖かい日差しの中で溶かしていく

リビングのソファで16歳になった老犬2匹が、お昼寝をしています。

在宅ワークの合間に、そんな彼女たちの穏やかな姿を眺めていると、ふと、10年ほど前の冬の朝のことを思い出します。

当時は、外にお勤めに出ていたフルタイムの日々。
朝早くの散歩、あたりはうっすら暗い時間。
凍えるような寒さの中、私は犬たちを連れて散歩に出ていました。

「これから10時間もお留守番させるんだから、せめて日中、ぐっすり眠れるように疲れさせておかなきゃ」

そんな義務感で、寒さに震えながらも彼女たちを連れ回していました。

夕方も、仕事から帰ればもう外は真っ暗。
家事に追われ、障害のある娘のケアに追われ、心に一ミリの余白もなかったあの頃。
しっぽを振って寄ってくる彼女たちに、「ちょっと待って、後でね」と何度背中を向けてしまっただろう。
10年近く、そんな生活が続いた。


ここ2~3年は、在宅ワークをするようになり、一緒に過ごせる時間が増えました。
今の私たちは、日中の暖かい時間を選んで外に出ます。

彼女たちの歩く速度は、ずいぶんとゆっくりになりました。
昔のように距離は歩けないけれど、立ち止まってクンクンと匂いを嗅ぐ時間を、私はただ隣で静かに待っています。

2026年1月 冬の晴れた日の散歩🐾

時間に追われていたあの当時では、考えられなかった光景です。

日差しを浴びながら、トボトボと歩く彼女たちの背中を見ていると、自然と「ごめんね」という言葉がこぼれます。

「もっと前から、こうしてあげられたらよかったね」

「もっと前から、この暖かさを一緒に感じたかったね」

でも、あの時の私には、これができなかった。
家族を守るために、必死に走るしかなかったから。

きっと、世の中のお母さんたちの多くが、子供の手が離れたあとに、 こうした「過去の自分」への後悔を抱えるのではないでしょうか。

けれど、過去をやり直すことはできなくても、 今の過ごし方を変えることはできるのかなと思います。

10年間の空白を埋めるように、今、ゆっくりと彼女たちの背中を撫でる。

「あの時はごめんね。でも、今はこうして一緒にいられて幸せだよ」

そんなふうに自分を許しながら、私は今日も、この静かな時間を大切に味わいたいと思うのです。