腎不全と診断されたとき、
多くの飼い主さんが最初に直面するのが
「食事をどうするか」という悩みではないでしょうか。
「腎臓ケアの療法食に切り替えたほうがいいのかな」
「タンパク質は制限しないといけないよね」
頭ではわかっていても、
現実は教科書どおりには進まないこともあります。
わが家の16歳の老犬、めめの場合。
私たちは、
いわゆる「療法食」という道を選びませんでした。
正確には、
その選択ができない状況だった、というほうが近いかもしれません。
※この記事は、腎不全の愛犬と暮らす中での、私自身の経験を書いています。
「なんでもいいから」という言葉に救われた日
診断された当初、
めめは食欲がかなり落ちていました。
療法食をどうするか以前に、
そもそも、
ほとんど口をつけてくれない状態が続いていました。
このまま何も食べられない日が続くのは、
さすがに心配になる。
そんなふうに感じていた頃です。
そのとき、先生から言われたのが、
この言葉でした。
「今は、なんでもいいから、食べられるものをあげてください」
その一言で、
張りつめていた気持ちが、少しほどけた気がしました。
「腎臓を守ること」よりも前に、
「今、食べること」を優先していい。
そう受け取れたことで、
私の中の迷いが、いったん落ち着いたのを覚えています。
数値と、「食べたい」のあいだで
食欲が少しずつ戻ってきた頃、
比較的、口にしてくれたのはお肉でした。
もちろん、
腎不全の犬にとって、
タンパク質は注意が必要なものです。
お肉を用意するたび、
頭のどこかで
「数値に影響しないだろうか」
という不安がよぎることもありました。
それでも、
お肉の匂いがすると、
めめが私のそばに寄ってくる。
全部ではなくても、
「今日はこれなら」という日がある。
その様子を見ているうちに、
今は、
数値だけを基準にするよりも、
本人の反応を大事にしたい、
そう思うようになりました。
※食事について迷いながら調整していた時期のことは、
別の記事に書いています。
療法食を選ばなかった理由
わが家では、
高価な療法食をいくつも試す、という段階にすらありませんでした。
食欲自体が落ちていて、
先生からも「今は食べられるものを」と言われていたため、
療法食について調べたり、購入したりすることはありませんでした。
でも、
それを「できないこと」として悩むより、
先生の
「食べたいものを」
という言葉を受け取って、
今の自分にできることに目を向けることにしました。
身近なスーパーで手に入る食材を、
めめが食べやすい形で用意する。
それが、
今のわが家にとっての現実的な選択でした。
「特別なこと」はできなくても
特別な食材や、
完璧な栄養管理はできません。
それでも、
いつものスーパーで買えるものを、
できる範囲で工夫する。
手間はかかりますが、
食事の時間が、
めめにとって負担だけのものにならないように。
そのことを、いちばん大切にしています。
波はあっても、今がある
もちろん、
迷いがなくなったわけではありません。
体調に波が出る日もありますし、
「これでよかったのかな」と
立ち止まることもあります。
それでも、
「食べたいときに、食べられるものを食べる」
という選択を続けながら、
めめは今、16歳の冬を迎えています。
無理に療法食を押しつけなくてよかった。
今は、そう感じています。
「正解」は、あの子が教えてくれる
このやり方が、
医学的な正解かどうかは分かりません。
けれど、
一緒にいられる時間の中で、
めめの様子を見ながら選んできたこと。
その時間そのものを、
間違いだったとは思っていません。
こんな選び方をしている家庭もある、
その一例として、
そっと残せたらと思っています。


